相続時精算課税について
相続時精算課税とは
相続時精算課税とは、贈与時に一定額(基礎控除が年間110万円、特別控除が累計2,500万円)までは贈与税が課税されず、相続時まで課税を繰り延べる制度です。
相続税の計算時に、贈与がなかったものとして、贈与した財産を戻して計算します。
適用により贈与税がかからないケースも多いですが、やや複雑な制度のため、使用する際には注意が必要です。税理士や税務署への事前相談をお勧めいたします。
1.メリットとデメリット
相続時精算課税のメリットは次の通りです。
- まとまった財産を生前に贈与できる。(相続争いの防止)
- 将来相続税がかからないケースでは、実質的に贈与税・相続税を回避できる
- 収益物件を贈与することで、賃料分が相続税対策になる
- 値上がりが予想される財産の場合、相続税対策になる
- 110万円までの基礎控除部分について、生前贈与加算の対象にならない
相続時精算課税のデメリットは次の通りです。
- 相続税申告時に使える特例(小規模宅地等の特例)が使えなくなる
- 一度選択すると、暦年課税に戻れない
- 不動産取得税が課税される(相続は非課税)
- 登録免許税の税率が相続の5倍
2.改正による基礎控除の創設(令和6年1月1日以降の贈与)
令和5年税制改正により、令和6年度1月1日以降の贈与では、相続時精算課税に基礎控除が創設されました。
これにより、年間110万円以下の贈与については贈与税がかからず、2,500万円までの特別控除(累計)にも含める必要がありません。
3.相続時精算課税を使うための要件
- 贈与する方が、60歳以上の父母または祖父母であること
- 贈与を受ける方が、18歳以上の子や孫であること
- 贈与の翌年の2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を提出すること
4.よくあるご質問
- 相続時精算課税制度と暦年贈与は併用できますか?
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できません。ただし、異なる贈与者からの贈与で併用することは可能です。
(例えば、父から相続時精算課税、母から暦年贈与は可)
- 相続時精算課税の手続きは自分でできますか?
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当事務所で関与する場合は、原則として税理士へのご依頼をお勧めしております。
自分で手続きされる場合は、税務署にご相談ください。手続きを忘れてしまうと、莫大な贈与税がかかる可能性がありますので、十分にご注意ください。
5.相続時精算課税を使った贈与の流れ
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01. 相続時精算課税適用の検討
まずは特例を使うことができるか、使った場合にデメリットが生じないかを検討します。
税務署または税理士へのご相談がお勧めです。税理士のご紹介を希望される方は、当事務所までお知らせください。 -
02. 贈与の登記
贈与契約書を作成し、法務局に贈与登記を申請します。司法書士の専門分野です。
登録免許税の納付もこのタイミングで行います。不動産取得税は約4か月後に納付書が送られます。 -
03. 贈与税の申告、相続時精算課税選択届出書の提出
贈与をした翌年の2月から3月の確定申告の時期に、税務署に申告・届出を行います。
この時期に行わなければ、暦年課税での計算となりますので、ご注意ください。
税理士への依頼をお勧めしております。